人材エージェントとして、数多くのプロ経営者、それも事業再生系のプロ経営者とお話していて、感じたことがある。
ほとんどのプロ経営者は事業再生にあたり、何をやるかというと、「当たり前のことを馬鹿みたいにちゃんとやる」いわゆる「ABC」というヤツをやるのだ。
もちろん、負け癖がついた社員のモチベーションを喚起するために、飛び道具的な技も使うのだけど、基本的にはABCである。
潰れかけた会社というのは、殆どが「やるべきこと」をやらなかったから、そうなってしまったことが多く、だいたい財務管理が杜撰とか、顧客ニーズのヒアリングが甘いとか、コンプライアンスが、とかそんなものである。
寧ろ、全ての「やるべきこと」をやり尽くして、それでも残念ながら潰れてしまう、なんていうケースはレア中のレア。
で、結局、原因がそんなところにあるから、「ABC」を徹底すれば、復活する。
もちろん「ABC」ができていなかった原因はあるし、社員にとっても今までやってこなかったことをやる話になるので、”血も流れる”し、辞める人も出てくるから、言うほど簡単ではないのだけれど、打ち手も見えずどうしようもない、ということは殆ど無い。
要はやるかやらないか、だけ。
それで、新規事業も、ちょっとそういう側面があるのかな、ということを最近少し感じている。
新たな事業を生み出さねば、イノベーションを起こさねば、という企業ほど、今の事業に課題感を抱えているのだが、殆どの場合、明確な問題があるのではなく、課題「感」だったりする。
課題「感」だと、結局何が課題で、どのように解決すべきかがあやふやになってしまうので、新規事業のプランニングは迷走しやすい。
しかし、その課題「感」を感じているシチュエーションやエピソードを、丹念に深掘りしていくと、本来その企業が体現していた「あるべき姿」から乖離してしまっていることが浮かび上がる。
もちろん、乖離したことにはちゃんと理由があるし、描いた「あるべき姿」は懐古趣味でしかないリスクがあるのだけれど、なぜ「あるべき姿」を実現できないのか、どうやったら「あるべき姿」を追求できるのか、という問いは、新規事業創出においても、一度議論されるべきテーマだと感じている。
今まさにそういった切り口で議論しているクライアントがいらっしゃるので、この先を楽しみにしたいと考えている。
まぁ、ご参考ということで。