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火星の人類学者―脳神経科医と7人の奇妙な患者 (ハヤカワ文庫NF)
- 作者: オリヴァーサックス,Oliver Sacks,吉田利子
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2001/04/01
- メディア: 文庫
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この本は、視覚障害や自閉症、トゥレット障害といった人々に、脳神経科医のオリヴァー・サックス氏が寄り添い、共に過ごした経験を綴った記録である。
オリヴァー・サックス氏は、「レナードの朝」という著作もあり、映画の方でご存知の向きも多いだろう。
で、なんで読んだのか?
興味本位、というのもあるし、障害者雇用、発達障害等の支援というのは、ビジネスとして実は注目されている面もあり、知識として入れておきたかった、というのもある。
「レインマン」的なイメージしか持てていなかった、自閉症の具体的な症例を理解できたのはとても勉強になったけれど、つくづく人間というのは不思議な生き物だなと感じずには居られない。
障害はもちろん非常に大変で、そのこと自体、悲痛ではあるのだが、それより先に不思議さが想起されてしまう。
小生が不届者なのか、それが作者の狙いなのかはわからないが・・・。
もちろん障害のある方がみんな特殊能力を持っているわけではないが、本書で取り上げられる人々の特殊能力たるや、凡人の努力では到達し得ないものがある。
実は、発達障害に関わる新規事業は、過去に色々リサーチしたことがあるのだが「ちゃんと診断はしていないがひょっとしたら」という人々は、世の中普通にいるもので、なんというか、「別の世界の話」と断ずるのも違うと思っている。
ちなみに本書のタイトルにもなっている「火星の人類学者」というのは、最終章で取り上げられたテンプル・グランディンという人の言葉である。
この人は、高度の自閉症を抱えながら、現代社会にうまく適合し、社会的に成功を収めた人物でもある。
一般的な人間の感情が理解できないため、あたかも火星からきた人類学者のように、人間の観察をし、「こういうときはこういうパターンで反応する」というように、人間の機微を意識的に学習したと振り返っている。
じゃあそのプロセスと、一般的な人間ってそんなに違うんだっけ、という疑問も感じるし、グランディン氏が語る幼少期の自閉症の症状についても、そういう執着的な行動が自分に全くなかったかといえば、そんなこともないよね、とも思うのである。
そう言った面からも「別の世界の話」と断ずるのは違うと感じる。
ビジネスに今日から役立つ、なんていうことは全くないが、深く考えさせられる一冊。
ご興味のある向きは是非。
まぁ、ご参考ということで。