タイトルを見て、皆さんなんだと思われるだろうか?
小生、色々なクライアントと会話していても、新規事業を期待する経営者、管理部門、起案者それぞれ、殆どの関係者が実は考えていないように見受けられることである。
「ように見受けられる」というのは、「これ考えてますか?」と聞いた先の展開が、小生も怖くて(苦笑)、全員に聞いていないから。
なので、「ウチはちゃんと考えているよ!」という方、申し訳ありません、あらかじめお詫びしておく。
で、何を考えていないのかというと、その事業を作るために、幾ら使うつもりなのか、ということである。
「いやいや、事業計画のファイナンスのところでちゃんと議論するでしょう?」というご意見もあろう。
もちろんその通りなのだが、小生が申し上げたいのはもっと前段階、例えば中計や戦略策定時の話。
経営が、「新規事業で10年後の売上100億円!」とぶち上げる際に、「その100億円の売上を作るために、幾ら金を使うつもりなのか?」ということである。
メルカリという会社があるのはご存知の通り。
あんな新規事業をウチも作れれば、という会社もあるかもしれない。
昨年4期目で黒字転換して売上120億円を計上している。
さて、彼らは120億円の売上を作るまでに、幾ら使ったのか?
ここに第4期の決算報告を貼っておくが
http://kanpo-kanpo.blog.jp/archives/8344008.html
物凄く簡易に考えると、資本金と資本剰余金を累計投資額とすれば、120億円を超えるのである。
もちろん、「彼らは使い過ぎ」「もっと少額投資で規模を作れるビジネスはあるはずだ」というご意見もあろう。
しかしこの数字は現実だ。
これから作ろうとする新規事業が、それくらい使ってしまう可能性は十分あるし、さらには使ったのに失敗することだってあるのだ。
「新規事業は最低100億円規模でなければ!」とおっしゃる経営者(および経営企画セクション)の皆さん、そのために100億円使う準備はありますか?ということである。
ほら、「小生も怖くて聞けない」という意味、わかったでしょ?
しかしここに、小さな事業を複数トライする正当性があると思っている。
売上100億円規模を目指さなければならない事情は、小生も理解できる。
しかし、真っ当な「意思決定プロセス」を備えた会社であれば、不確実性の高い新規事業案に、いきなり100億円投資する決断は絶対出来ない筈だ(これは経営者の覚悟の問題ではない)。
だから、小さな事業を複数立ち上げ、可能性のあるものに追加投資をしていき、結果的に大きな額になっていくという、段階的なプロセスが必要なのだ。
つまり、「小さく産んで大きく育てる」「多産多死」。
そう、これはシリコンバレーのベンチャーキャピタルのやり方だ。
「もっと大きな規模の新規事業案が欲しい」と考える企業は、改めて「そのために幾ら使うのか?」「本当にそんな意思決定が出来るのか?」も含め、よく考えていただきたいと、切に願っている。
まぁ、ご参考ということで。