昔話である。
20代の頃、リスク性のあるものも含め、金融商品の販売を仕事にしていた。
会社側の提示してきた指針は、「①商品理解力があり、②リスク許容度があり、③資産背景のある顧客に、きっちり説明して理解をしてもらってから購入いただくように」というものであった。
しかし、現実問題として、全てを満たす顧客というのはめったにお目にかかれないし、その通りに営業を行っていたら、会社側が要求するノルマは絶対に達成できなかったと思う。
かといって、「現実的には売れません」ということを言い続けるのも、当時の小生の判断としては難しかった。
それはもう、とても厳しい板挟みである(体調を崩す同僚もいた)。
で、どうしたか?
上記3つの指針に、「(曖昧な基準だが)トラブルになりやすそうな顧客か」というのを加え、判断基準を厳密にした上で、その4つの指針のうち、1つについては解釈の幅を持たせる、という向き合い方をした。
商品の理解に、やや曖昧なところを残すものの、リスク許容度があり、資産背景もあり、あまり揉めそうにないタイプのお客様であれば、そういう方は大抵「やってみたい」と思っている面もあり、強引なクロージングはしないものの、お勧めはしていた。
しかしさらに、リスク許容度がやや低いとなると、これはもう撤退する。
前者がイレギュラーは1つ、後者がイレギュラーが2つ、だ。
そうやって、並の営業成績で生き延びつつ、自分自身のモラル・プライドとの折り合いを付けていたのである。
振り返ると「罪の告白」になるのかもしれないが、とりあえずトラブルにはならなかったし、むしろ顧客からの評価は高い方だったと思う(正当化するつもりはない)。
「罪の告白」をしてまで申し上げたかったのは、人生において決断を迫られた時に、判断基準の一つとして、例示したかったから。
ある会社に転職するべきかどうか、という場面で、例えば判断材料として、職務内容、年収、人間関係、将来性、といった4項目があったとする。
その時、職務内容が希望とややズレていても、その他の条件は希望どおりであれば、それは新しい職務に出会うチャンスかもしれないが、職務内容も年収もズレているという風になると、(今の会社を辞めたくて仕方がなくても)そこは踏みとどまる、という判断だ。
完璧なチャンスを待っていては、現実的な成果を出すことはとても難しいが、際限なく妥協してしまえば、取り返しのつかない痛手を被る。
なので、「イレギュラーは1つまで」。
人に誇るような人生ではないが、20代の頃に決めたルールによって、何度も助けられたのではないかと思う。
まぁ、ご参考ということで。