人間というのは、過去を美化する生き物らしい。
いつまでも過去の苦しみに囚われていては、生きていけない故の防衛本能だろうと思っている。
それが変な形で現れるのが、表題の「辞めた会社に対するポジティブなバイアス」だ。
人間、せっかく意気揚々と転職しても、必ずしも順調な時ばかりではない。
そうなると、「あぁ、自分は前の会社では恵まれてたのかもしれないな、今の会社に比べれば、やっぱり良いところもたくさんあったよな」なんて思ってしまう。
確かにそうかもしれない(酷い会社に入ってしまえばもちろんそうだ)。
しかし、そうは言っても「なんだかんだあって」前の会社は辞めたのだ。
その事実を忘れてはいけないし、忘れてそんなふうに考えてしまうのは、大なり小なり前の会社に対する、ポジティブなバイアスがかかっている面は否めないと思う。
だいたい、「前は良かった」なんて考えたところで、取り返しはつかないのだし。
とはいえ、先々を見据えて注意をしなければならないのは、それでまた転職した時に、やっぱりその直前の会社も「良い思い出」になってしまうこと。
二社三社と転職をすると、いろんな会社の良かった思い出が積み重なり、過去の会社の良いところばかりの寄せ集めと、今の環境を比較するようになってしまう。
そんな存在しない上にバイアスがかかった寄せ集めと比較して、勝てる会社など存在しないわけで、転職を重ねた人は、どんな環境でも不満を感じるようになる怖さがあるのではないか。
もちろん何でも許容しろというつもりは無いのだが、現状への不満が、過去の環境との相対的な比較の中で出てくる場合は、ひょっとしたらバイアスがかかっているのではないかと、冷静に振り返った方が良いと考えている。
まぁ、ご参考ということで。