伝え聞きのエピソードで恐縮だ。
ある国の軍隊の格闘技教官が、訓練の最終試験として、実戦のシミュレーションを課すそうである。
(テーマが物騒で申し訳ないのだが)要人のオフィスに潜入し、暗殺するというミッションを、マネキン相手に訓練生に実行してもらう。
訓練生は皆、ひっそりと要人の後ろに回り込み、首を絞めるなりなんなり、学んだ技術でミッションを遂行する。
訓練生全員が終わったところで、教官は模範解答を示すのだが、教官は要人のオフィス入口に居る秘書のパソコンのモニター(当時はブラウン管)を投げつけるところからはじめ、その場にあるものを使ってマネキンを無茶苦茶にしてしまうそうだ。
その教訓はもちろん、「求められる結果を最短で実現できる方法を、その場で判断・選択・実行することが肝要で、技術に囚われて間違った行動をとってはいけない」というものである。
そのエピソードを聞いた当時、小生は既に武術を数年納めていて、衝撃を受けたものである。
学んでしまえば、それを大事にする心理が働いてしまう。
学んだプロセスが長くなればなるほど、負けられない、捨てられないというプレッシャーが積み上がっていく。
しかし、それに囚われてしまうと、その場での最適解が見えなくなってしまう。
修練を積んだ人間ほど、容赦無く学んだものを捨て去る勇気が必要で、学んだことにこだわるほど、却って負けるリスクが高まるということがあるのではないだろうか。
まぁ、ご参考ということで。