今日は、双方代理の功罪について、だ。
双方代理というのは、M&Aや不動産の世界で出てくることが多い概念だが、一人のプレイヤーが、売り手と買い手の代理人を同時に勤める状態を指す。
M&Aの世界では、日本の中では良くあるし(業界最大手がそうだ)、不動産も仲介業務は双方代理であることが多いのだが、M&Aについて言うと、グローバルでは双方代理はあまり一般的ではないと認識している。
何故なら単純な話、利益相反の誹りを免れ得ないからだ。
売り手と買い手の利害は相反する。
片方はより高く、片方はより安く、と考えている中で、どちらかの代理人であれば、そのどちらかの意向を受けて代理すれば良いものの、双方の代理というのは、「お前どっちの味方なんだよ?」という状態が構造的に存在するということだ。
これが、罪の面である。
一方で、功は何か?
個人的な意見だが、昨日のふわっとしたニーズの話が代表で、皆が皆、代理人に取引を委任できるほど、はっきりと自分の意思を持っているとは限らない。
しかし潜在的には、厳然と取引の意向がある中で、売り手と買い手の双方のニーズを理解した代理人が、ふわっとした話をまとめ切ることで、そのままでは成立しなかったビジネスを成り立たせることができる、ということがあると思う。
もちろん、本来は成立すべきでなかったディールまで、力のある代理人がまとめてしまい、関係者が不幸になるという事故のリスクもあるのだが、確率論的には取引が成立することのベネフィットの方が大きいのではないだろうか。
転職エージェントについていうと、「片手と両手(両面)」なんていう言い方をして、一人が企業もしくは転職者だけの担当をするか、両方担当するか、という状態を表すのだが、一つの法人として、企業と転職者の担当をしているので、双方代理になる。
転職エージェントに相談をするときは、双方代理の功罪を、よく考えて臨むのが良いと思う。
特に、功の方で言及したものの、「本来成立すべきでなかったディールで不幸になるリスク」というのは、転職者がキャリアという取り返しのつかない要素を取引に晒している以上、慎重に見極めるべきだろう。
シリーズが長くなってしまった。
まぁ、ご参考ということで。