人間到る処青山あり

諸々よもやま話(とりあえず)

住宅ローンの正体

昨日に続き、お金とキャリアのお話。

小生若い時分、銀行に勤めていて、当時東日本でトップクラスの住宅ローン貸付業務(ミドル業務)をこなしていたことがある。

いい話も悪い話もいろいろあるわけだが、皆さんは住宅ローンとはどういうものか、ご存じであろうか?
「それは家を買うときに、購入資金として借りるものであって…」ということなわけだが、銀行融資としては、ちょっと特殊な要素があるのが住宅ローンである。

住宅ローンは何に融資をするのか?
私見を一言で述べれば、会社員のキャリアに融資をしている、というのが本質だと思う。

新築の住宅を購入すれば、その瞬間に価値は三割落ちるといわれているが、そのような状況の中で、購入資金の満額融資をするというのは、既に「担保割れ」を起こしていて、回収リスクが顕在化している。
さらに、最長で35年の融資というのも、通常の法人融資では考えられない長さであり、貸手にとって不確実性が高い内容だ。

また、住宅ローンには各種優遇措置があり、大企業の会社員には、優遇レートというのが存在するし、勤務歴が浅かったりすると借りられなかったり、転職歴が多いと、転職の経緯説明を求められたりする(小生は書面を提出したことがある)。
そう、住宅ローンというのは、終身雇用を前提とした、「勤め先」に対する融資なのだ。

外形上は、一般個人が住宅購入の際に、購入した住宅を担保に借り入れるもの、というイメージだが、実態は、「勤め人が勤め先の規模・信用力に応じて得られる信用」なのである。
ゆえに、個人事業主や、創業経営者というのは、住宅ローンを組むことは難しいし、転職が多いとこれもまた同様である。

とはいえ、長く借り手優位の時代が続いているので、広く住宅ローンを組む機会は増えているし、大企業勤務と中小企業勤務でそう大きな違いがあるわけではないが、本質はそういうことだと考えている。
なので、転職と住居購入を近いタイミングで考えるのであれば、購入してから転職というのが穏当である(それとて、銀行側からすれば、「え、ちょっと話が違うなぁ」という心象ではあるが)。

結構大事なことだが、転職エージェントでそこまでのお話をする人は少数派なので、念のため。
まぁ、ご参考ということで。