まずはリンク。
小生周辺で年末年始話題だったこともあり、手に取る。
入山氏の著作は二作とも読んでおり、それなりに楽しませて貰ったし勉強にもなったのだが、前二冊は内容の重複もあるし、どちらかというと概要書という趣だった。
本書は、一般読者を想定していることに変わりはないものの、より本格的な経営理論解説を行い、多くのビジネスパーソンに実務で使える切り口、武器を提供しようという野心的な試み。
小生は電子書籍で読んでいるので物理的なボリュームは感じないが、60万字、紙の書籍は「殴られたら死ぬ」くらいの厚みである。
それだけの中身があるということなのだが、これから読む人のために申し上げておくと、大学の一単位の講義内容くらいはあるんじゃないかと思うので、覚悟されたい。
1日1冊読むこともある小生で、一週間以上かかっている。
それはともかく、本書は世界標準と認められている経営理論の解説をしつつ、その前提となる「考え方」も含めて明らかにする。
経営理論の分類を、経済学、心理学、社会学に分けて読み解く入山アプローチは前二冊と変わらず。
それなりに意識高いビジネスパーソンであれば、ポーターのファイブフォースとか、バーニーのRBVとかは当然知っていると思う(実務で使えるかは別として)。
しかしそれらはフレームワークとかアウトラインであって、「考え方」ではないと著者は言う。
この二つの理論は経済学に分類されるものなのだが、経済学の大前提として、完全競争というものがある。
完全競争では超過利潤を生み出せないので、経済学ベースの経営理論というのは、いかに完全競争から距離を置くか、すなわち「差別化」が本質という「考え方」なのである。
そんな「考え方」の上にポーターもバーニーも存在する。
それだけで個人的には眼から鱗なのだが、そんなのは冒頭数十ページでしかなく、そこを皮切りにどんどん進んでいき、経営学の課題やフロンティアも含め、圧倒的なボリュームで読者に迫る。
2020年もまだ始めだが、ビジネス書では本年ナンバーワン、いやこの10年で五本の指に入る書籍ではあるまいか。
まぁ、ご参考ということで。