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フォローしている著名人のブログで紹介されて、思わず手に取った一冊。
これはぜひ多くの人に読んでいただき、哲学、社会学、プライバシー、事業開発など、多面的なアプローチで議論したいと思わされる本である。
メッセージ、決済系のアプリをフックに、社会そのものの在り方が変化しようとしている現代中国の実態を取り上げながら、その社会学的意味や、他の国との比較において論じるという骨太な一冊。
冒頭が昨今の中国最新事情なので、ビジネス系読者の興味をグイグイ引っ張るが、中段から社会学、法哲学的な議論にシフトするので、ちょっと読者を選ぶような気がするが、現代中国の在り方と、日本を含むそれ以外の国々との対比は、色々と考えさせられるところがある。
中国に対する著者の主張は、専門でもなく中国籍でもない小生に是非を述べるのは難しいのだが、民主制だが迷走する国と、独裁制だが国民の人気取りをする国とどちらが国民にとって幸せなのか、あまねく監視カメラで録画される代わりに、たとえ最愛の娘が誘拐されてもすぐに見つかる国と、そうではない国のどちらが幸せなのか、などという形で問題提起されると、非常に悩むところである。
この辺りは、もはやアメリカのSFあたりに答えを求めた方が良さそうな気がするが、まさに現在進行している実態なのである。
もちろん中国では、少数民族に対する洗脳なども行われていて、それは本書でも取り上げられており、非難されるべき現実としつつも、都市部で実装されつつある「幸福な監視国家」と、GDPRをはじめとする、他の国で目指そうとしている姿を比較した時に、功利的に社会を望むであろう多くの人に対して、重大な問題提起を行う本だと言えよう。
小生の周りには、「中国スゲー」という人も、「あれはいくらなんでも」という人も両方いるのだが、それぞれの顔を思い浮かべつつ、非常に考えさせられるのであった。
広く読んでいただき、色々と意見を戦わせてみたい本である。
まぁ、ご参考ということで。