人間到る処青山あり

諸々よもやま話(とりあえず)

「大人のためのメディア論」 読了 〜フェイクニュースの時代に〜

まずはリンク。

 

毎度、Kindleデイリーセールと高評価レビューに乗せられて買ったわけである。

学生時代に、フーコーとかデリダとかマクルーハンとか、現代思想社会学的なジャンルを齧った人間としては、思わず食指を伸ばしてしまった次第。

 

著者の石田氏はこんな人。

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%9F%B3%E7%94%B0%E8%8B%B1%E6%95%AC

 

前掲の「フーコー」とかの名前や理論の概略を存じ上げない人に、この手の話を説明するのは難しい。

学術的な意味でのメディアは、一般用語としてのメディアよりかなり広い概念で、人と人との間を繋ぐもの、くらいの意味合い。

 

本書では、古代の壁画や活版印刷、ラジオ、テレビ、インターネット、スマートデバイスというメディアの変遷を振り返りながら、人間とメディアの向き合い方がどう変わってきたか、これからどう変わっていくか、それに対してどのような向き合い方があるのか、という論旨を展開していく。

社会人向けの6回講座を書籍化したものなので、内容は平易だと思うし、そう言われれば大学の一般教養の授業を受けているような趣がある。

 

しかしまぁ、この手の分野は多くの人の関心を呼ばないということも個人的には理解しているし、「21世紀のメディアはコンピューターが自己完結する(コンピューターにしかわからない)コミュニケーションを生成するので、人間はそれを紐解く武器を持たねばならない」と言われても、多くの人は「そんなの気にしすぎじゃね」「SFじゃあるまいし」というリアクションだと思う。

とはいえ、昨今の話題でいうと、SNS上でのフェイクニュースの拡散にどう対処するか、という話があって、著者の言う「武器」というのは「リフレクション=回帰≒内省」ということなので、ちゃんと距離をおいてメディアと向き合いましょうね、という意味では、有効な視座を提供してくれているものだと思う。

 

それにしても、電子書籍と紙の書籍の違いを踏まえた、紙の書籍の意義を語るくだりを、Kindleの音声読み上げで聞いている気分は、なんとも複雑なものであった(苦笑)。

現代思想にかつて興味のあった方なんかは、アップデートの一冊としては良いのではないか。

 

まぁ、ご参考ということで。