人間到る処青山あり

諸々よもやま話(とりあえず)

「除染と国家」 読了 〜なんともゲンナリ〜

何はともあれリンク。

除染と国家 21世紀最悪の公共事業: 21世紀最悪の公共事業 (集英社新書)
 

 

多くの日本人がそうだと思うが、東日本大震災に端を発する原発の問題というのは、メディアや書き手、立場によって言うことが異なり、何を信じて良いかわからなかったし、今でもわかっていないのではないか。

そんな思いがあったので、この手のテーマの書籍を手にするのは腰が引けたのだが、本テーマでは定評がある毎日新聞記者による調査報道がベースであり、レビューも高かったこともあって拝読した。

 

福島県周辺で行われた除染事業の実態と、除染事業の意思決定を促した官僚・政治家の実像を丹念に追ったルポ。

もちろん今もなお厳しい状況下にある福島県民の実情も記されている。

 

本書で著者は、除染の問題だけを問いたいのではなく、この国の民主主義の根幹が崩れていることを主張している。

官僚組織の欺瞞、その場さえなんとかなればという短絡的思考、公僕でありながら国民が見えなくなっている姿。

 

本書で提示されていることが文字通りの事実だとすれば、大変な問題ではあるし、先日読んだこちらの書籍にも通じると思う(こちらは元官僚が書いたという意味では、なんとも・・・という感じである)。

dai19761110.hatenablog.com

 

ただ、本書では徹底的に糾弾する姿勢で書かれているけれども、最初から悪事を働こうと思って官僚機構に居座っている人は多くないはず。

特に今回の原発事故のように、未曾有かつ甚大な被害においては、安直な保身に走る以外なかったのかもしれない、とも思う。

 

「だから大目に見てやれ」などという気は全くないし、度し難い悪行だと思うものの、自らの保身に走る「小さい」サラリーマンを非難したところで、なんともやり場がないのである。

そしてこういう話は、この国では何度も繰り返してきた過去があり、「またこれか・・・」という気持ちも否めない。

dai19761110.hatenablog.com

 

とにかくゲンナリする一方なのだが、我が国で今なお苦しい立場にある同胞が存在し、その裏には日本人の悪しき伝統である組織的欺瞞があるということを、理解しておいた方が良いとは思う。

メンタルの強い時にご一読あれ。

 

まぁ、ご参考ということで。