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捨てられる銀行3 未来の金融 「計測できない世界」を読む (講談社現代新書)
- 作者: 橋本卓典
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2019/02/13
- メディア: 新書
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金融出身で新規事業開発に携わる立場としては、読まないわけにいかない。
ソーシャル上で知人が感想をシェアしていたのも、手にしたキッカケになっている。
共同通信記者で、長く金融業界を担当していた著者によるシリーズ三作目(ちなみに前の二作は読んでいない)。
主に地域金融機関の話題が中心なのだが、最近話題になった新しい取り組み(飛騨信用金庫のクラウドファンディング・さるぼぼコインとか)や、問題が噴出した事例(スルガ銀行、商工中金の不正)を取り上げ、これまでの問題と、来るべき時代の変化に如何に対応するかを論ずる、という内容である。
感想を一言で述べれば、「そういう方法もあるにはあるけれど、根本的な問題解決にはならないだろう」という感じ。
「金融の未来」ではない、と述べたのはそういうことである。
不良債権の早期処理を前提とした金融検査マニュアルと、硬直化された運用を是正すべき、という主張は、その通りだと首肯する。
続く、これからは「共感経済」なのだから、地域に根ざして共感の広がりを作る金融を、という提言は、流石に甘い考えなのではないかと感じた。
意味がないとは言わないが、理念で救えるほど地域経済、地域金融機関が置かれている状況は甘くないはず。
銀行業というのは、そもそも資金需要がなければ融資は出来ない。
住宅ローン・アパートローンに代表される不動産担保融資に進出したのも、リテールの運用商品で荒稼ぎしようとしているのも、マーケットでの債券運用でなんとかしているのも、結局法人の資金需要がなくなってしまったから、そちらに手を出さざるを得なくなった、というのが実態のはずである(そういう意味では、バブル前で既に銀行の役割は一度終わっている)。
著者は「(地域・企業を)育てる金融」と提唱するが、本質的に金融機関は事業のことを理解できないので、情報の非対称性がある中でリスクを取るためには、よほど利鞘が稼げるか、やっぱり担保を確保するしかないのであり、育てるも何もない。
他にも色々と申し上げたいことはあるのだが、本書についてはこの辺にしておく。
心理学や組織論の聞き齧りでページを重ねるくらいであれば、手触りのある実態情報をもう少し積み上げた編集にした方が、読み応えもあったし、著者の手腕が活きたのではないかと感じる一冊。
まぁ、ご参考ということで。