長く転職エージェントをやってきたけれど、日々お客様に教えていただくことだらけだ。
今日の話は、実際にお手伝いした転職希望者の方から教えていただいたこと。
今、勤務している会社に退職を告げると、「では次にどうするのか」という話に必ずなる。
こちらの身を心配して聞いてくれる人もいるが、そうではないこともある。
小生が初めて転職した際には、エージェントから、行き先を絶対に言ってはいけないと言われたのだが、その時は、若手銀行員が転職先を明らかにしたせいで、本社経由で転職先に圧力がかかり、転職がパーになった上に若手銀行員も冷や飯を食わされたエピソードを聞かされた。
と、言われつつも、「鬼」と言われた上司に「育ててもらった恩を忘れて、行き先も告げずに去るのか?」と凄まれて、転職先を告げてしまった過去が、小生にはある(苦笑)。
圧力をかけてまで引き止めるほど優秀な人材ではなかったので、小生の場合は何のトラブルもなかったけれど、人事に説明する上で必要なのか、嫉妬の類なのかはわからないが、善意ではなくしつこく聞いてくる人もいるので気をつけたい(ちなみに、「鬼」の上司はとても良い方で、故に当時の小生は答えたし、今も年賀状のやり取りだけは残っている)。
さて、余談が長くなったが、冒頭の転職希望者の方は、業界では有名なスーパーブラック企業にお勤めだった方。
勤務状況がブラックというより、「北朝鮮」と揶揄されるほどオーナー支配が強く、社員の行動監視は日常茶飯事。
その方の転職理由も、同僚がFacebookに退職報告をアップし、その投稿に「いいね」を押したら「全くいいねじゃない!!」とオーナーが激昂し、「いいね」を押した社員全員がヒラに降格させられるという事件を受けてのことで、転職先を告げようものなら、何をされるか分かったものではない。
かといって嘘を言っても後々角が立つし、社会保険の手続きもあるしで悩ましい。
小生も心配になって、「なんて言いましょうか…」ときいたのだが、その回答には、なるほどその手があったかと唸らされてしまった。
それは、「現在、複数の会社から内定を頂いており、決めかねている状況です。もうしばらく考えて、最終的に落ち着いたらご報告します。」というものだ。
それでその場は逃げ切り、引き継ぎを済ませ、有休消化に入る頃には、次の行き先なんて誰も興味がなくなっているのである。
昨今は求人も活況だから、実際にそんなことを言っても変ではないし、そういう人も沢山いる。
複数オファーをやりくりして、複数の企業で働くことすら不思議ではないご時世である。
蛇足だが、この方法の優秀なところは、実際にありそうなシチュエーションで逃げながら、それ以上の追求を許さない巧みさと、退職意思表示の緊張感が高い瞬間さえウヤムヤにすれば、みなすぐに興味を失うという、深い人間心理の洞察にある。
あまりみんなが使うと効果が落ちてしまうのかもしれないが、退職意思表示の強いプレッシャーに悩んでいる人も多いと思うので、あえて記事にする。
退職者は現勤務先に、次にどこに行くかを述べる義務は本来なく、職業選択の自由もあるし、弱気になる必要はないのだが、そう四角四面にはいかないのが浮世の習い。
当たり前だが、ご利用は計画的に&自己責任で。
まぁ、ご参考ということで。