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サイゼリヤ おいしいから売れるのではない 売れているのがおいしい料理だ (日経ビジネス人文庫)
- 作者: 正垣泰彦
- 出版社/メーカー: 日本経済新聞出版社
- 発売日: 2016/08/02
- メディア: 文庫
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みんな知ってるサイゼリヤ、その創業者の経営論である。
多くの方はご存知ないかもしれないが、正垣氏は理科大で学んで外食の世界に入った異例の経歴を持ち、理科大卒だからではあるまいが、その科学的な経営論は外食業界では結構有名である。
外食業界の関係者と、同社について少し意見交換をしたことがあるが、絶対に真似できない圧倒的な存在という評価の一方、「私がやりたいのはあれじゃない」といったニュアンスが感じられたことが多かったと思う。
もちろんそれは小生の勘違いかもしれない。
しかし本書で語られる内容は、上記の業界関係者の、評価とニュアンスを裏付けるような、凄みと難しさを想起させるものであった。
外食業界に入る人たちのモチベーションの有力なところは「自分が作ったおいしい料理でお客様を喜ばせたい」というものだと思うが、タイトルの通り真逆のことを提唱するのである。
もちろん正垣氏も、お客様を喜ばせたいと考えている。
経営理念の第一がそもそもそれだ。
そこからが違うのだが、正垣氏はお客様に喜んでいただけている状態を、客数で「追う」。
客数を増やすためには、毎日食べられる価格、味、立地でなければならない。
それを極限まで追求するために、不断の努力を、組織として役割分担して追求していく。
努力についても、計量化できない努力は追求しない。
たとえば、店長に売上責任を求めない。
なぜなら現場の売上は商品、立地、競合などで変化するため、店長の努力だけでは解決できないからだ。
店長には現場のコスト削減、業務改善の責任を担ってもらい、売上責任は本社の商品部が負う。
こういった割り切り方である。
個人的には、正垣氏の仰ることは極めてクリアだし、その通りだと思うし、ますますサイゼリヤのことが好きになった。
しかし一方で、業界関係者のあのニュアンスもよく理解できるのだ。
自分のやりたいと思っていることと違っているのだとしたら、何のための努力なのかと。
それで儲かって楽しいのかと。
とはいうものの、小生も色々仕事をしてきて、経営というものの難しさ、ノウハウや理論が死ぬほど存在するのに、殆どの人がうまくいかない難しさは、ここら辺にあるのではないか、とも感じるのだ。
やりたい(と思う)ことをやっていて、本当に楽しいですか、本当にお客様に喜んでいただけていますか、ということなのである。
真の意味での顧客目線を持ち、その実現を通じて顧客に喜んでもらい、その喜びを自分の喜びとできるのか?
本書は、極めて本質的かつ難しい問いを投げかけていると思う。
まぁ、ご参考ということで。