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皆さんはイスラム金融をご存知だろうか?
イスラム教の戒律に則った金融ということなのだが、小生が本書を読む前に知っていたことで言うと、「金利の概念がない」等々の特徴がある。
新規事業に携わっていると、伸びる市場に注目する癖がついているのだが、日本人には縁遠いイスラムというのは、伸びる市場と言われている。
イスラム圏の新興国人口が伸びている、というのもあるし、基本イスラム教というのは、結婚すれば配偶者もイスラム教になるし、子供もイスラム教ということで、増える一方なのだ、という話も聞いたことがある。
さて、本書は日本におけるイスラム金融研究の第一人者による解説書。
タイトルを解説すれば、オイルマネーの増強という背景もさることながら、これまで存在しなかったイスラム金融の仕組みが、この30年に整備され、イスラム圏の経済需要を一気に引き受けられるようになった、ということが大きいようだ。
そして個人的に感心したのが、基本的な考え方として、実体経済を促進するための金融であるということ。
「金利の概念がない」というのは、「お金がお金を生む」ということを戒めているのであり、金融の裏付けとなる実態取引があれば、基本的にはファイナンス可能ということだ。
もちろん社会的意義もあるし、本書でも解説があるが、昨今の過剰流動性の問題からは一線を画しており、良い仕組みであると感じた。
本書について蛇足ながらもう一つコメントをすると、著者の真摯な姿勢に好感をおぼえた。
イスラム金融取引の一つに、ダイヤモンドを買ってまた売却したことにして、融資を受けるというリテール金融の仕組みがあるのだが、それを揶揄する形で紹介した雑誌記事に対し、著者は厳しく戒めている。
イスラムの教義に敬虔であろうと生み出した仕組みに対して、異文化で門外漢の我々が茶化すようなコメントをすることは無礼であると。
正直、小生もクレジットカード枠の現金化のような仕組みだなと、ネガティブに感じたのだが、その指摘を拝読し、「おっしゃる通り」と襟を正した次第。
「Happy Holidays」のテーマを先日書いたが、
我々はどうも宗教的なテーマに対して、想像以上にデリカシーを欠けているのだと思うので、改めて気をつけようと思うし、そのような他国の文化を、門外漢として心から尊重しようとする著者の姿勢は、素晴らしいと思う。
少しでもイスラムにご興味のある方であれば、是非ご一読を。
しかし、今年は読みも読んだり130冊。
一年間の読書レビューを振り返るエントリーを、どこかで書いておきたいと思う。
まぁ、ご参考ということで。