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本書は、リクルート出身で、人事コンサルティング会社を営む著者による一冊。
経営、特に人事の分野では新しいブームが定期的に訪れるが、著者はそういったブームに流されることなく、原理原則に則った人事運営を推奨していて、本書ではその考え方と実務ノウハウを、余すことなく披露している。
人事系の本は、どうしても内容が評価や報酬などの制度論か、社風のような目に見えない要素に議論が偏りがちになり、新しいブームが来るたびに一応学習しつつも、「ほんとに(うちの会社で)役に立つのかなぁ・・・?」と感じるもの。
本書に関しては、人事の業務を「採用・育成・評価・報酬・配属・代謝(退社)」の6つの要素に分解し、それぞれを連携させた制度設計と運用を、各企業のステージに応じて展開していくことを推奨しており、極めてわかりやすく、奥行きの深い理論となっている。
まさに人事とは「経営そのもの」ということを思い知らされるのだが、それゆえに本書のノウハウを実践しようとすると、経営のあり方自体が問われるし、特に「代謝」は「退職率の設計」というあまり日本企業では馴染みのないことまで考えなければならないので、経営の本気度が問われるのだろうと思う。
本書の中に、「制度で人を変えることはできない。もともと社員が持っていたものを、制度で具現化するのだ」という趣旨の文があり、安直な評価/報酬制度の導入に警鐘を鳴らすとともに、ポテンシャルのある人材を採用するところから組織を設計することの意義を説いている。
人事の実務に携わる方にとって、今日からすぐに使えるノウハウが満載であるが、むしろ人事実務と携わらない、経営企画、経営そのものを担う方々に、ぜひ読んでもらいたい一冊である。
こんな本が、わずか2000円弱で読める我々は、世界の中でも最も恵まれた存在であると思い知らされる。
まぁ、ご参考ということで。