人間到る処青山あり

諸々よもやま話(とりあえず)

「悪と全体主義」 読了

リンクを貼る。

 

あくまでインターネット上の、だけれども、昨今のバランスを欠いた世論形成に危機感を持ったりしていて、気になって読んだ次第。

本書で援用されている、ハンナ・アーレントという人は、ユダヤ人の哲学者で、第二次大戦時のユダヤ人虐殺の経緯を研究した人である。

 

※参照

https://ja.m.wikipedia.org/wiki/%E3%83%8F%E3%83%B3%E3%83%8A%E3%83%BB%E3%82%A2%E3%83%BC%E3%83%AC%E3%83%B3%E3%83%88

 

本書は、ハンナ・アーレントの著作を紐解きながら、第二次大戦時のドイツで、何故あの様な凄惨な事件が起きたのか、社会的背景を紐解いていくものである。

ハンナ・アーレントの原著をあたったことはないのだが、本書に関しては、極めて難解で重厚なテーマを、冗長にならずに、極めて平易に展開していく。

 

社会科学系の書籍は結構読んだが、その中でも特筆すべき平易さであり、それだけで一読に値すると思う。

当たり前だが、平易=内容が薄い、ということではない。

 

個人的になるほどと感じたのは、斯様なユダヤ人排斥の流れは、一朝一夕ではなく、さまざまな仕掛けの中で成立していく土壌が作られたということと、その流れに関わった人達は、特別異常ではなく、極めて平凡な人々だったということ。

今日明日いきなり社会が先鋭的になることはないが、その流れを形作るのは、誰しも加担する可能性がある、というわけだ。

 

本書の処方箋は、結局のところ地に足をつけた、バランスの良い議論、思考を続けていく、ということでしかない。

それを「なんだしょーもない」と思うのか、「今日から気をつけるべき振る舞い」と受け止めるかは、読者の判断に委ねておきたい。

 

まぁ、ご参考ということで。