新規事業を中心に、社員から広くアイデアを募集する制度は、益々盛んである。
もともと社内提案制度では、その制度の狙いがいくつかあって、本格的な事業案を求めるケース、ボトムアップの風土形成を期待するケース、企画提案を通じて社員の学びの機会を提供するケース、などが良く言われている。
実際のところは、それらの狙いが入り混じって設計されていることが殆どで、力点をどこにおくか、という感じである。
お陰様で色々な企業と、社内提案制度について議論させていただく機会をいただくのだが、最近の感触で申し上げると、「ボトムアップの風土形成」に力点を置かれていることが多いのかな、という気がする。
その要因は、下記のようなことではないか。
・(日本経済と)本業の衰退が予見されて、はや数年、各企業も新規事業にかなり取り組んでおり、それらを超えるネタはなかなか出てこないので、風土形成に力点を置かざるを得ない
・職務の細分化、専門化が進んでおり、広くアイデアを求める機会を提供しないと、益々現在の職務に集中し、社員のクリエイティビティが下がってしまうから
・本業や社会の閉塞感を打破し、”イノベーティブ”な組織に転換するきっかけになることを期待
一方で、本格的な事業提案を求めることの難しさ、というのも、個人的には感じている。
事業提案を求めていった際に、最終的に「では実行しましょう」となると、起案者が「言い出しっぺ」として事業の中核を担うことに(流れ上)なることが多い。
そこへ、次から次へと優秀なサポートメンバーが貼り付けられる会社は良いのだが、そうではない会社の場合、事業成長が起案者個人の能力に依存してしまうことになる。
そうなると、本格的な事業提案を求めたい場合は、実施後の起案者をサポートする仕組み・体制まで用意することが重要になってくるのだが、制度設計段階ではなかなか準備が至らないもの。
なので、ある程度の時間・資金・人員的に、柔軟に手を打てる体制を、可能な限り用意したいところである。
社内提案制度自体の目的に求められること、先を見越した柔軟な体制、その辺りは、今後も重要な論点になっていくような気がしている。
まぁ、ご参考ということで。