人間到る処青山あり

諸々よもやま話(とりあえず)

「弱くても勝てます」 読了

まずはリンク。

 

「失敗の本質」を読んでゲンナリした後だったので、組織でなんらか成功している話はないものかと、積読から引っ張り出した次第。

ドラマ化もされたそうなので、ご存知の向きもあるかと思うが、日本一の進学校である開成高校野球部を追いかけた本である。

 

開成高校はそもそも野球場が無いし、野外の運動場を使えるのも週一回という練習環境で、甲子園東京地区予選の四回戦くらいまで行ったという実績を誇る。

それだけ書くと、物凄く緻密に練られた戦略と練習方法で勝ち上がっているように思われるかもしれないが、ちょっと違う。

 

もっと無茶苦茶というか、ヤケクソに近い戦い方である。

そんな考え方があったのか、というくらい破天荒である。

 

まずピッチャーは、ストライクが入らないと試合にならないので、ストライクが投げられれば良い。

各ポジション一試合に三回くらいしか球は飛んでこないので、守備は頑張って練習しない。

 

とにかくバッティング。

難しい連携プレイ、攻撃プレイはそのための練習をしてられないので、とにかく一番からフルスイング。

 

たまたま当たろうものなら、高校野球はそれで試合の流れが決まってしまうので、ドサクサの大量点でボロが出ないうちに、コールド勝ちで逃げ切る、というもの。

無茶苦茶である。

 

いや、トーナメント制や高校野球のルール、各種制約条件を踏まえた、超高度な戦略なのかもしれない。

「なるほどその手があったか!!」と衝撃を受ける一方、では快進撃を続けるかというと、そうはならない。

 

戦略を実行していくところで、各学生が苦戦し、なかなか上手くいかない。

監督の指導も空回りしてしまい、負けは多くなってしまう。

 

この本の欠点なのだが、筆者のトーンが全体にシニカルで、時に学生を変人扱いして面白おかしく脚色している部分が無きにしも非ずというところがあり、本当に変人なのか、何か別の問題で戦略実行に支障をきたしているのか、よくわからないのである。

なので、ビジネス書を読む感覚で得られるのは、戦略は大胆に描くことで思いもよらないダイナミズムを生む、ということと、実行フェーズはまた別の話、というところまで。

 

シニカルな筆致は、読み物として面白いのだけれど、個人的にはちょっと残念。

まぁ、ご参考ということで。