人間到る処青山あり

諸々よもやま話(とりあえず)

ビジネスモデルが逆回転するとき

いま、書籍流通の世界では、いよいよ先行きを危ぶむ声が高まりつつあるようだ。

危機を訴える声は、それこそ10年以上前から存在したが、日本の書籍流通のビジネスモデルが盤石故に、大きく取り上げられることはなかった。

 

近年大きく問題化している理由は、流通の末端にある書店が撤退していることだろう。

それが何故問題なのか?

 

これまでの日本の書籍流通は、再販制度といって、書籍が売れなければ出版社に返品できる一方、定価販売を守るというルールになっていた。

書籍というのは、単なる商品という枠を超えて、文化、思想としての装置でもあり、たとえ売れなくても、イチ個人がいつでも手に取れる形になっていることに意味があったからだと理解している。

 

なので書店は、商品の鮮度を気にすることなく、売りたい本をある程度抱えておくことが可能になったのである。

ということは、書店はあまり売れない本をも、在庫として抱えている、小売業としてはあり得ないビジネスモデルであるとも言える。

 

さて、その書店が潰れるとどうなるか?

在庫の書籍は、全て出版社に返品され、資金を回収されることになる。

 

そうなると困るのは出版社だ。

地方の個人経営の書店ならまだしも、大規模なチェーンが畳むとなれば、その支払いは膨大なものになるし、世の中にはギリギリの経営を続けている零細出版社もある。

 

当然、連鎖倒産という可能性も、残念ながら現実のものになる。

良い時は盤石の仕組みであった再販制度も、一度逆回転を始めると、「盤石に」破壊を始める。

 

既に出版社の経営危機は、規模の小さなところを皮切りに、かつてない勢いで進行していると聞く。

完成されたビジネスモデルというのは、全体が変わると一気に逆回転を起こすものなのだ。

 

ビジネスに関わる人達は、この先書籍流通の世界で起こることを、注意深く見守るべきだと思う。

まぁ、ご参考ということで。