人間到る処青山あり

諸々よもやま話(とりあえず)

誰が話を聞くのか、どう理解してもらうのか

新規事業のお手伝いをしていて、よくあるアウトプットが、役員・決裁者向けのプレゼンテーション資料とシナリオの完成だったりする。

起案者と一緒に作り上げていく中で、いつも気にしているのが、「経営者がこれを聞いてどう感じるのか」と「聞いた経営者が『どんな事業案だったか?』という質問に対してなんと答えるか」である。

 

何を当たり前のことを、と思われるかもしれないが、一生懸命アイデアを考えれば考えるほど、第三者が冷静にどういう印象を持つのかはわからなくなるものだし、新規事業提案の顧客でもある経営者の視点を持つことは、当たり前でもやっぱり重要なのである。

「経営者がこれを聞いてどう感じるのか」については、ふつうにハイレベルな要求だ。

 

会社全体を預かっている立場として、その新規事業をどう受け止めるのか。

経営者個人の勝ちパターンとマッチしているのかいないのか。

 

「勝ちパターンとマッチ」というのは、別にマッチしていても、していなくても良いのである。

マッチしているならしているなりの、していないならしていないなりの説明が必要だということだ。

 

経営者というのは良くも悪くも強烈な成功体験がある人達で、だからこそ経営者までのし上がったわけだが、その成功体験を理解した上で、どう「刺しに」行くのか。

今日もクライアントにお伝えしたけれど、殆どの経営者は個として強い人達なので、社員の働き方がスマートになるとか、そういう業務改善系の話は、本音のところではピンとこないことが多い(そんなものが無くても結果を出してきた人達なのだ)。

 

そこに、「みんながあなたみたいな人ではない」というロジックは微妙だと思っていて、そう言ってしまうと「なぜ私のようにできないのか?」という別の論点にズレてしまう。

そこから先はケースバイケースだけれど、例えば今までの働く環境と、これからの働く環境は違いますよね、といった説明をしていくことになる(成功体験は強烈でも、それがずっと通用するとも思っていない人達でもある)。

 

もう一つの「聞いた経営者が『どんな事業案だったか?』という質問に対してなんと答えるか」は、「経営者が」エレベーターピッチ(=30秒)でアイデアを説明するとしたら、なんと喋らせたいかをデザインするということである。

プレゼン時間が5分だろうが1時間だろうが、結局聞いた側が、人になんと説明するかが全て。

 

聞いた経営者自身が、「今度こういう事業を始めることにしたから宜しく」と言えるようになっているからこそ、初めて組織が動くようになるのだ。

それに「誰に何をして、こういうところが面白い事業なんだ」という形で経営者の脳ミソに刻みつけないと、その先の様々な議論やハードルに直面した際に、右へ左へのブレや差し戻しになりかねない。

 

また、そこまで事業案をシェイプするのは、事業化後のチームビルディングにも資する。

プレゼンしてOKを貰った次の瞬間から、事業案は「起案者のもの」から「みんなのもの」になる。

 

「みんなのもの」としていくためには、そういうシェイプされた強力なコンセプトが核になり、みんながそのコンセプト実現に向けて、勝負をかけるのだ。

誰が話を聞くのか、どう理解してもらうのか。

 

まぁ、ご参考ということで。

既存品は怖い

こんな記事を見た。

blogos.com

 

カード会社からのコメントはディスラプターに対する非難の要素もあるように思うが、アーリーアダプターにアタックするのは消耗戦になってしまっている、というのはよくわかる。

結局勝負はここから、になるのだが、実際はこれから「キャズム超え」の最も難しいポイントに直面するということか。

 

マクロな話はともかく、小生個人の利用体験で振り返ってみると、今後PayPayを使うイメージがわかないのは事実。

小生はオートチャージPASMOを持っているため、使えるところは、ほぼそれで決済する。

 

0.5%の還元なら、オートチャージのクレジットカードと同等になってしまうし、こちらはスマホを出して操作する必要すらない。

現状すでにPASMOが使えない店を避けてしまうくらいだし、JRの駅施設ではセルフレジを優先的に使う。

 

日本の会社員は殆ど非接触ICカードを定期券として持っているから、大体の人ががSuicaPASMOの方が便利、という判断ではなかろうか。

で、さらにいうと現金、クレジットカードが存在するわけで、それよりメリットがあるんでしたっけ、というのが二次元バーコード決済の「これから」だと思う。

 

中国で普及したのは、それはそれは納得感のある理由があって、普及のために重要なポイントが日本には存在しない(銀行口座を持たない多数の国民、破格の決済手数料、プラットフォーマーの資金運用益、現金への低い信頼性、スマホサービス普及度、等々)中で、じゃあどうやったら普及するの?である。

まず、対クレジットカード・SuicaPASMOで言えば、現在それらが使えない決済シーンをどう開拓するか、だろう。

 

これはきっと大変な努力が必要になるだろう。

決済手数料を抑えるのだとすれば、スマホだから得られる個人データのマネタイズや利用機会の喚起を行えないと、ROIが合わない。

 

もう一つ、対現金の方は、小規模店舗向けのニーズになるんじゃないか。

一万円札を出すと申し訳ないとか、手数料の問題でクレジットカードが使えないとか、そういう場面で現金を置き換えられれば現金よりメリットが出るだろう。

 

しかしそうなると、超小口リテールにサービス普及を進めることになるので、これはこれで大変な気がする。

何が言いたかったかというと、ことほど左様に既存品というのは怖いのである。

 

大きく騒がれたけど、なかなか普及が進まないようなテーマは、何らかの形で既存のサービスがガッチリ食い込んでいることがある。

新しいサービスの構築には、広い視野を持って、競合分析をする必要があるんだよなぁと、再認識させられた記事なのであった。

 

まぁ、ご参考ということで。

 

 

 

新年あけましておめでとうございます。

皆様、年末年始はいかがお過ごしでしたでしょうか?

本年最初は、会社のWebサイト向けに寄稿したコラムを転載いたします。

 

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タイトル:変革期の始まり

 

皆様、新年明けましておめでとうございます。
旧年中の御厚誼を深く御礼申し上げますと共に、本年の皆様のご多幸を、心よりご祈念いたします。

さて、2019年は天皇陛下の退位と新元号への切り替え、ラグビーワールドカップの開催や消費税の増税など、我々の生活や経済に大きな影響を及ぼしそうな出来事が多数予定されています。
ラグビーワールドカップを引き合いに出しますと、本年のラグビーワールドカップ、2020年の東京オリンピック、そして2021年の関西ワールドマスターズゲームズと併せ、これからの3年を「ゴールデン・スポーツ・イヤーズ」というのだそうです。
参考URL:https://www.projectdesign.jp/201805/tokyo-2020/004857.php

もちろん、こういった大きなイベントが続いて楽しい、というお話もありますが、これを利用して、事業機会や国としての成長機会にしよう、という「力学」も働いています。
所謂ハコモノを始めとするインフラの整備や国際化、イベント運営のためのテクノロジーの進化、スポーツそのものの産業化や、人づくりも含めた新事業や、新しい社会のあり方の創生などです。

ここに更に、2025年には大阪万博招致が決まりましたので、こういった「力学」は更に加速していくものと思います。 こういったイベント事でドライブしていく方法は、正と負それぞれの側面があり、個人的には批判的なスタンスを持っています。

一方で、こういったイベントに関わる方々からお話をお聞きする機会もあるのですが、課題先進国である我が国を、如何に持続可能にし、再成長を促せる枠組みを作れるか、オリンピック等を契機に着手し、実装していくのだという、強い思いと高い志もまた、確かに存在するのです(一時期よく言われた"レガシー"という言葉が、これを企図したものです)。
そういった思いを持たれた方々とご一緒しますと、個人的なスタンスなどは脇に置いて、その高い志を実現するために、なんとかお役に立とうと思うのも、また人情だったりも致します。

弊社では、企業の新規事業創出を支援する業務を行っておりますが、本年も仕事を通じて、そういった強い思い、高い志を実現できるよう、邁進して参る所存です。

本年も宜しくお願いします。

 

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まぁ、ご参考ということで。

本年もお世話になりました。

皆様、本日が仕事納めでしょうか。

今年一年、当ブログにお付き合いいただき、誠にありがとうございました。

 

今年からKindleの音声読み上げによる読書を再開し、大量に本を読んだ(聞いた)一年で、せっかく読んだ以上は記録に残そうと、読書ブログ化が進みました。

とは言え、昔からビジネス書・教養書の類しか読まず、結局ビジネス目線で本と向き合うこともあり、書評といってもビジネス・新規事業テーマで押し切ったのではないかと自負しております。

 

おそらく来年も同じスタンスで続いていくと思いますので、変わらぬお付き合いをお願いいたします。

良い年末年始をお過ごしください。

 

ブログの再開は1月4日を予定しています。

まぁ、ご参考ということで。

 

※本年の読書の振り返り

・本年のベストオーサー

山口周 氏

dai19761110.hatenablog.com

dai19761110.hatenablog.com

dai19761110.hatenablog.com

dai19761110.hatenablog.com

dai19761110.hatenablog.com

 

・知的に興奮した書籍

dai19761110.hatenablog.com

dai19761110.hatenablog.com

dai19761110.hatenablog.com

 

・面白かったビジネス読み物

dai19761110.hatenablog.com

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dai19761110.hatenablog.com

「イスラム金融はなぜ強い」 読了 〜明快に伸びる分野は見逃せない〜

リンクを貼る。

イスラム金融はなぜ強い (光文社新書)

イスラム金融はなぜ強い (光文社新書)

 

 

皆さんはイスラム金融をご存知だろうか?

イスラム教の戒律に則った金融ということなのだが、小生が本書を読む前に知っていたことで言うと、「金利の概念がない」等々の特徴がある。

 

新規事業に携わっていると、伸びる市場に注目する癖がついているのだが、日本人には縁遠いイスラムというのは、伸びる市場と言われている。

イスラム圏の新興国人口が伸びている、というのもあるし、基本イスラム教というのは、結婚すれば配偶者もイスラム教になるし、子供もイスラム教ということで、増える一方なのだ、という話も聞いたことがある。

 

さて、本書は日本におけるイスラム金融研究の第一人者による解説書。

タイトルを解説すれば、オイルマネーの増強という背景もさることながら、これまで存在しなかったイスラム金融の仕組みが、この30年に整備され、イスラム圏の経済需要を一気に引き受けられるようになった、ということが大きいようだ。

 

そして個人的に感心したのが、基本的な考え方として、実体経済を促進するための金融であるということ。

金利の概念がない」というのは、「お金がお金を生む」ということを戒めているのであり、金融の裏付けとなる実態取引があれば、基本的にはファイナンス可能ということだ。

 

もちろん社会的意義もあるし、本書でも解説があるが、昨今の過剰流動性の問題からは一線を画しており、良い仕組みであると感じた。

本書について蛇足ながらもう一つコメントをすると、著者の真摯な姿勢に好感をおぼえた。

 

イスラム金融取引の一つに、ダイヤモンドを買ってまた売却したことにして、融資を受けるというリテール金融の仕組みがあるのだが、それを揶揄する形で紹介した雑誌記事に対し、著者は厳しく戒めている。

イスラムの教義に敬虔であろうと生み出した仕組みに対して、異文化で門外漢の我々が茶化すようなコメントをすることは無礼であると。

 

正直、小生もクレジットカード枠の現金化のような仕組みだなと、ネガティブに感じたのだが、その指摘を拝読し、「おっしゃる通り」と襟を正した次第。

「Happy Holidays」のテーマを先日書いたが、

dai19761110.hatenablog.com

我々はどうも宗教的なテーマに対して、想像以上にデリカシーを欠けているのだと思うので、改めて気をつけようと思うし、そのような他国の文化を、門外漢として心から尊重しようとする著者の姿勢は、素晴らしいと思う。

 

少しでもイスラムにご興味のある方であれば、是非ご一読を。

しかし、今年は読みも読んだり130冊。

 

一年間の読書レビューを振り返るエントリーを、どこかで書いておきたいと思う。

まぁ、ご参考ということで。

 

 

「ティール組織」 読了 〜異質な組織論〜

リンクを貼る。

ティール組織――マネジメントの常識を覆す次世代型組織の出現

ティール組織――マネジメントの常識を覆す次世代型組織の出現

 

 

今年小生の周辺でポツポツ話題になり、2度ほど「読みました?」と聞かれ、また個人的に興味を持っている組織論カテゴリーなので、拝読した次第。

正直、色々否定的な意見を持ってしまう一冊であった。

 

本書で推奨する進化型の組織(ティール型組織)というのは、組織構成員の心理的安全やモチベーションが発揮されており、そのコンセプト自体を否定するわけでは無いものの、全ての組織や人にとって最適とは言えないだろう、というのが最初の違和感。

本書でも、全ての組織がこうあるべきと強弁しているわけでは無いが、冒頭の章で、人類の歴史と「発達心理学」的観点から、ティール型組織に至る道筋を語っており、あたかも「マルクス主義史観」を聞かされるような違和感もある。

 

続く章で、ティール型と著者が分析する実在組織の紹介や解説があるのだが、これまた膨大に長い。

これほどの長さを高いモチベーションで読み切る人がどれほど存在するのか疑問な程であり、であれば書籍として「読者に伝わる」という大事な効能を欠いているのではないか、という疑問も。

 

そして組織のあり方の問題は、そういったポリシーに見合う人材を採用し、合わない人材には辞めていただくという「重たい」プロセスも必要だと思うので、本書を読んで、「今日からウチも!」というわけにはいかない(本書でもそんなにインスタントな説明はしていないが)。

さらに言えば、「発達心理学」といっても、学術的なファクトは弱く、なんというか「ビジョナリーカンパニー」みたいな筋立てなので、実践してみて「上手くいくかもしれないし、上手くいかないかもしれない」以上の感想が無いのである。

 

最後のまとめや追記、解説に至る流れに、最終的にはそういった世界観を信じるかどうか、といったニュアンスが感じられ、先に読んだ方から「宗教的」という評があったのも腹落ちである。

本年に話題になった一冊であるが、一言でいえば「異質」という印象を持った。

 

まぁ、ご参考ということで。

世界は変化しているのだね。

今日は何の日かと問われれば、多くの日本人は「クリスマス」と答えるのだと思う。

ちなみに娘は仏教系の学校に通っているが、同級生同士では当然クリスマスの会話になる。

 

その辺を徹底しないあたりが、日本人らしい宗教観だなと思ったりもするけれど。

今日、いつものようにGoogleで検索しようとしてWebを立ち上げると、案の定Googleのロゴが装飾されたデザインになっており、何気なくクリックしてみると、「Happy Holidays 」という表記がされる。

 

表示されたリンクはこんな感じ。

https://hapaeikaiwa.com/2017/12/20/%E3%80%8Cmerry-christmas%EF%BC%88%E3%83%A1%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%82%AF%E3%83%AA%E3%82%B9%E3%83%9E%E3%82%B9%EF%BC%89%E3%80%8D%E3%81%AE%E6%8C%A8%E6%8B%B6%E3%81%8C%E3%82%BF%E3%83%96%E3%83%BC%EF%BC%81/

 

そう、色々な宗教的バックグラウンドの人がいて、それぞれ祭祀の時期だったりもするので、クリスチャンのお祝いである「クリスマス」を使わずに、「Happy Holidays 」とするのだ。

こういう話題になると、新しいだけで違和感を覚える人も居るようだが、多様性を認め合う社会の変化は、個人的にはとても良いことだと思う。

 

改めて振り返ると、「Happy Holidays 」という表記自体は、2〜3年前から目にしていたように思うのだが、意味合いを知ったのは今年が初めて。

そう、既に変化は始まっていたのだが、小生がその意味を気付いていなかっただけなのだ(ほんとはもっと昔からあったのかもしれないが)。

 

新しい事業を世に問う立場として、こういうテーマには敏感でありたいと、自省を込めて今日思うと共に、やっぱり社会をより良くする方向で事業を作っていきたいねと、強く思うのである。

まぁ、ご参考ということで。