人間到る処青山あり

諸々よもやま話(とりあえず)

「江副浩正」読了

読んだ本をネタにするのは当ブログ始まって以来ではないか?

それはともかく、アマゾンのリンクを貼っておく。

 

江副浩正 https://www.amazon.co.jp/dp/B07835MRZ7/ref=cm_sw_r_cp_api_5gHvAb82D8YVX

紙の本はものすごく分厚いので、電子書籍をお勧めしたい(安いし)。

 

小生もリクルートという会社に縁があり、今も現役、卒業生それぞれとお付き合い頂いている。

そんなこんなで、色々な方にレコメンドされ、読んだ次第。

 

優れた人物伝であり、戦後の経済史でもあり、経営戦略論、組織論でもあると思う。

個人的に驚かされたのは、30年以上前のそのエピソードの新鮮さである。

 

著者の意図と筆力ではあるだろうが、今も通じるビジネス論とも言えるし、30年以上前から悪弊が変えられない我が国のダメさ加減とも受け止められる。

農業ビジネス、新興勢力への社会の眼差し、マスコミの体質、有罪ありきの司法制度。

 

読みながら何度「あぁ、今も同じだ」「あぁ、あの会社と同じだ」と思ったことか。

それだけ人間の本質とは、変わらないものなのかもしれないが。

 

それ以外にも、やはりリクルートという会社を特徴付ける、人と組織が何故生まれ、どのように継承されていったかは、大いに学ぶところがあると思う。

リクルートの人と組織については、先日こんな記事があった。

 

http://www.careerhigh.jp/entry/recruit_merit

中途でグループに所属した小生も共感しかり、という内容で、本書とは別の角度から分析した興味深いものだと思う。

 

江副氏の変節、晩年の数々のエピソードは、まるで初期の沢木耕太郎作品を読むようで、一人の人間として心に迫るものがあり、エンタテインメントとしてもしっかりとした奥行きのある評伝である。

年始から本年ナンバーワンに出会ってしまったかも知らない。

 

まぁ、ご参考ということで。

彼を知り己を知れば百戦殆うからず

いうまでもなく、孫子の名言。

一応解説のリンクを貼っておく。

 

http://kotowaza-allguide.com/ka/karewoshiri.html

孫子は割と戦争でどうするかという話より、戦争になる前からどうしておくべきか、という内容が殆どだったと記憶しているが、ともあれ、ビジネスにも普遍的に通用する内容なので、一読を進めたい(とはいえ、若い子が読むと安直な経営批判につながりやすい気はする)。

 

ビジネスにも、と申し上げたが、特にこの「彼を知り己を知れば百戦殆うからず」という言葉は、新規事業を考える方々にこそ、じっくり噛み締めていただきたいと思っている。

 

 

新規事業を構築する際には、割とアイデア、思い優先で議論を深めてしまい、顧客不在、競合不在のままドツボにはまることは多い。

新規事業なんだから競合は存在しないと言い張る向きもあるが、顧客目線では、必ず競合というのは存在する。

 

まずもって「誰を倒すのか?」という、「彼を知る」ことはきわめて重要である。

もう一つ、「己を知る」というのも言わずもがな重要である。

 

我々はどのような能力を持っていて、ふつうに攻めて「彼」を倒すことが出来るのか?

そもそも今の顧客は、我々の何処を、何を評価してくれているのか?

 

これがわかっていないまま、新規事業にチャレンジしようとする企業は案外多い。

きょうび、幾らでも選択肢がある中で、わざわざ自社を選んでくれる顧客が居る。

 

その顧客は何故選んでくれたのか?

そこにこそ、自社の強みのヒントがある。

 

全くの飛び地の事業も悪くないが、自社の強みを生かしてこその新規事業だし、自社の強みを理解することは、本業にとっても大いに意味がある筈だ。

 「彼を知り己を知れば百戦殆うからず」

 

まぁ、ご参考ということで。

事業の奥行きを作る

世の中には色々なビジネスが存在するが、目に見えているビジネスだけのものもあれば、外からは見えないところに「稼ぎどころ」があるビジネスもある。

 後者で比較的有名なのは、百貨店だろう。

 

百貨「店」というくらいなので、目に見えるのはお店だが、稼ぎどころは外商と呼ばれる、店舗外で販売するセクション。

各百貨店ごとに、外商の強い弱いはあるそうだが、外商が弱い百貨店は総じて商売全体が弱い。

 

かつて聞いた話だが、ある清涼飲料水メーカーは、小売店向けの卸値を激安に設定し、大量流通させてブランド認知度を上げ、自動販売機の利益で稼いでいるそうである。

その話に至っては、自動販売機を毎日目にし、時々利用もしているのに、そんな風に収益を底上げしているなんてつゆ知らず、だ。

 

勤務先近くにGINZA SIXがある。

中の賑わいはそれなりだが、物が売れているのを見る機会は非常に少ない。

 

賃料も人件費も相当な筈だが、それに見合う売り上げがなさそうだとなると、あのお店はなんなのか?

どこで稼いでいるのか?

 

いずれにしても、表面的なところを真似しても失敗するし、逆に「あんなのはダメになるに決まっている」と断ずるのも安直だ。

事業を構想する人間は、目に見えるところだけではない、「奥行き」まで捕まえていきたいものである。

 

自戒を込めて。

まぁ、ご参考ということで。

 

 

新年あけましておめでとうございます

新年1回目は、会社のウェブに公開したコラムを転載します。

魂込めて書きましたので(笑)、ご笑覧ください。

改めて本年もよろしくお願い申し上げます。

 

 

「我々は何者で、どこへ向かうのか」

新年あけましておめでとうございます。
本年も皆様にとって、実りある一年となりますこと、心よりご祈念申し上げます。

さて、2017年のビジネスシーンは、相変わらず話題の絶えない年でした。
一昨年から引き続き、AIやIoT、Fintechといったキーワードに加え、「働き方改革」「副業解禁」「RPA」など、会社員の仕事にまつわるテーマも多くの耳目を集めました。

一方で、小職の携わる新規事業の領域においては、クライアント企業の要求が明確にレベルアップしたことを感じさせられた一年でもありました。
これまでは、新規事業が評価されるにあたり、その比較対象となるのは既存事業であり、既存事業と比べて新しいのか、収益性が高いのか、取り組む意義があるのか、といった議論が重ねられていました。

しかし昨年辺りからは、比較対象となる既存事業が、もはや持続可能なモデルとは言えないという危機意識を背景に、その新規事業がはたして、自社の次代の柱となりうるものなのか、という観点で評価をされるようになったと感じています。
我々はそれを、「本業の再定義」と申し上げておりますが、今や全ての日本企業が、「本業の再定義」と向き合わざるを得なくなったと認識しています。

「本業の再定義」とはすなわち、「我々は何者で、どこへ向かうのか」という問いに答えることでもあり、その答えを見出す試行錯誤は、ある種の「アイデンティティクライシス」の中にあると申し上げても良いかと思います。
その文脈の中で語られる、AIやIoT、Fintechといったキーワードは、人間がこれまで積み上げてきた営為が失われてしまうのではないか、という「不安」を伴うものであり、「働き方改革」を始めとする仕事に関わるワードも、これまでの日本企業が前提としていた諸条件が崩れていくといった、根底に悲劇的な色合いを纏った形で語られていたように感じます。

さらに、コンテンツやサービスの輸出先だと多くの人が考えていた中国が、彼の地のサービスの方が(色々な特殊事情はあるにせよ)遥かに先進的であり、Mobikeの進出に見るように、逆に日本がそのサービスを受け入れる立場になったというような事例も、日本に大きな衝撃を与えました。
引き続き緊張感の高まる国際情勢もあり、2017年は20数年振りの株高にもかかわらず、その実感が乏しい、多くの方にとって漠然とした不安を感じる一年だったのではないでしょうか。

「我々は何者で、どこへ向かうのか」、この非常に重い問いを、クライアントと考え続ける中で、現時点での唯一の解は、「答えが見えなくても、問い続けなければならない」というものだと考えています。
ある種、泥に塗れるような思索や、オープンイノベーションに代表される、外部との交流を通じた試行錯誤のプロセスを経ることで、アイデンティティは見出され、力強く再スタートが切れるようになるのです。

小職としては、本年の新しい試みとして、引き続きボトムアップでの新規事業創出支援に取り組みながら、CVCやアクセラレートプログラムなどに代表される、オープンイノベーションに何らかの形で関わりつつ、ボトムアップとオープンイノベーションを有機的に連携させるようなチャレンジに取り組んでいきたいと考えております。
「答え」を見出すのは、容易ではありませんが、問い続けた人間にしか「答え」を見出すことは出来ないのだと信じ、クライアントの皆様と共に、歩んで参る所存です。

本年も引き続きのお引き立ての程、何卒宜しくお願い申し上げます。

案ずるより産むが易し

お陰様で無事に2017年最終営業日を迎える事が出来ました。

本年のご愛顧、心より御礼申し上げます。

 

今年も一年、新規事業と人材採用の両面に関わり、お客様からの期待が日々高まって行くのを実感しながら、出来る限りのチャレンジを行って参りました。

来年もお引き立ての程、何卒よろしくお願い申しあげます。

 

振り返ると、関わった新規事業はお陰様でボチボチ順調であり、そこはクライアントの皆々様の努力の賜物ではあるのですが、不確実なビジネス環境の中で、思い切って飛び込んでみれば「あれよあれよ」という展開もございました。

以前も申し上げましたが、新規事業の企画をどこまでも練り込んだところで、「五分五分」の状態を超えることはないように感じております。

 

最終的には、その「五分五分」の状態で、前に進めるかどうか、という決断を迫られる訳ですが、人間はどうしても先送りしたくなるもので、残念ながらそういった先送りの場面にも遭遇することも、現実としてございます。

しかし本日、一年を締めくくるにあたり、あえてそこへ、「案ずるより産むが易し」という一言を投げかけたいと思います。

 

我々のような立場からすれば、ある種のポジショントークかとも思いますが、前に進めてみたら想定よりも楽しい展開が、ということもまた現実ですし、仮にそうならなかったとしても、前に進んだ人間にしか見えない世界というのもまた、確かに存在するのです。

全ての日本企業が、イノベーションを求められていると申し上げても過言では無い昨今、たとえ小さな一歩でも、前に進む事が、大きなイノベーションに繋がるのだと信じております。

 

来年も微力ながら、皆様のお役に立てればと、切に願っております。

皆様よいお年をお過ごしください。

 

まぁ、ご参考ということで。

 

プロフェッショナルは進化し続ける

何かの分野のプロフェッショナルとは、すなわち「完成された人」ということではないのだなと、今日お会いした方々に、改めて気付かされた。

いつも大変お世話になったりもしているプロフェッショナルの方々は、特定の分野のプロでありながら、常に新しい取り組みにチャレンジしていて、そのために多くの人と会い、学び、汗をかいている。

 

だからこそ、思いもよらないアイデアを考えつくし、話を聞けば「へーっ!!」と唸らせられるし、こちら側もワクワクするような楽しいお話をしてくれる。

彼らは常に努力をしていて、「これで良い」と安住することをしない。

 

その高いプロ意識に、こちらの身も引き緊まる思いだ。

来年に向けて、清々しい気持ちにさせてくれた、貴重な1日であった。

 

今日のところはライトにまとめさせて頂く。

まぁ、ご参考ということで。

新規事業の比較対象が変わった

企業が新規事業に対するスタンスが変わったなと、最近本当に実感する。

真剣度が上がったのはきっとお察しがつくと思うが、いったい「どう上がった」のか?

 

かつては、新規事業の比較対象は既存事業だったと思う。

今あるビジネスと比べて、儲かるのか、成長性が高いのか、新しいのか。

 

それを超えられなけば、敢えて取り組む意味はない。

そんな感じだったような気がする。

 

しかし最近のクライアントの危機感は、かつて比較対象だった既存事業も、もはや先が無いという認識の中、相対的に優位かというより、「本当に自社の未来の屋台骨になりうるか」という絶対値で見るところまで来ているように感じる。

それだけ真剣に取り組むのは、とても素晴らしいと思う。

 

一方で、徒らにハードルを上げてしまうと、チャレンジそのものが難しくなるというデメリットもありうる。

その辺りの力加減が難しく、正解の無い領域でもあるが、「本物は百に一つという覚悟で、一だけを求めるのではなく、実際に百のチャレンジを行う」というのが正しいように思う。

 

その意気込みであれば、経験上は百に行かずとも、「一」に出会うのである。

転職活動もそう、ヘッドハンティングもそう、ベンチャー投資もそう。

 

「一を求めれば出会えず、百求めれば百に至らず出会える」そんな心意気で、「未来の屋台骨」を作りたいものである。

まぁ、ご参考ということで。